検査技師の業務

病院の臨床検査技師の検査内容

臨床検査技師は病院や検査センター、健診センターなど様々な場所で仕事をしています。

どの医療施設もほぼ同じ検査内容の仕事をしていますが、医療施設によって若干検査内容が異なります。

今回は病院で勤務する臨床検査技師の検査内容について書いていきます。

 

 

病院によっては測定する検査機器がない病院もあります。

そのため、今回は検査機器が病院内にあることを条件とします。

注意ポイント

今回のブログでは病院に検査技師が1人以上いて、検査する設備が整っている病院に限定します。

 

 

 

検体検査

 

ほとんどの病院は生化学検査や血液検査などの検体検査は実施しています。

検体検査で患者さんの状態を把握する上で重要になります。

 

 

 

生化学検査

血液検査の中で最も検査項目が多く、検査の要と言っても過言ではありません。

 

肝臓や胆道の酵素、腎臓、脂質系(コレステロールなど)、電解質(Na、Kなど)などを主に検査します。

この他にも多くの検査項目を測定します。

 

 

採血管は分離剤入りのスピッツで採血をします。

採血後に遠心分離し、血清で測定します。

生化学検査で測定する項目はほとんど血清中に存在するので、遠心分離で血清と血球(赤血球や白血球など)に分離させます。

 

溶血していた場合、LDやAST、Kなどの検査数値が高値となるので、溶血していた場合は取り直しをします。

 

 

血清以外にも血漿で測定することもできますが、ほとんど血漿で検査することはないです。

血漿の採血管は抗凝固剤が含まれており、MgやCaなどの2価の金属イオンをキレートしてしまいます。

血漿で2価の金属イオンを測定すると、実際の検査数値よりも低値になります。

そのため、あまり抗凝固剤入りのスピッツでは測定はしません。

 

 

ポイント

  • 各臓器の状態を把握することができる
  • 生化学検査は血清で測定する
  • 血漿で測定すると2価の金属イオンが低値になってしまう

 

 

ナオキ
全血のまま測定してしまうと、測定する機械のプローブに負担を掛けてしまうので、全血では測定しません

 

 

 

 

免疫学検査

主に腫瘍マーカーやホルモン、薬物濃度などを検査します。

 

生化学検査と同様に血清で検査することが多いです。

BNPを測定する際は血漿で測定することもあります。

BNPが溶血していた場合、検査数値は低値になるので、溶血していた場合は取り直しをします。

 

生化学検査と比較すると、オーダーされる数は多くなく、癌やホルモンの異常が疑われる場合しか検査しません。

 

 

 

 

血液学検査

血液学検査は貧血白血病出血傾向など血液疾患を知ることができる血液の中枢です。

 

赤血球(RBC)や白血球(WBC)、血色素量(Hb)、血小板(Plt)などを検査します。

この他にも、白血球の詳細な分類をすることも可能です。

白血球と一言で言っても好中球やリンパ球、単球など多くの種類の白血球が存在します。

その白血球を分類して患者さんがどのような症状であるかを把握します。

 

 

 

血液検査をする機械は赤血球や血小板を希釈してアパーチャに通過する血球容積を計測します。

また、フローサイトメトリーという原理で測定するので、好中球やリンパ球などを細かく分類することができます。

測定する機械で異常細胞が出現した際は、顕微鏡で目視し、異常な白血球などをカウントします。

 

血液学検査は生化学検査とは異なり、全血で測定します。

主にEDTA-2Kの採血管で測定します。

全血で測定するので、溶血は関係ありませんが、血液が凝集していた場合は取り直しをします。

血液の凝集は血小板の周囲に血小板同士や白血球、赤血球などが凝集してしまい、実際の数値よりも低く出てしまいます。

そのため、血液が凝集していた場合は取り直します。

 

 

 

ポイント

  • 患者の体の状態を把握することができる
  • EDTA-2Kで採血をし、全血で測定する

 

 

 

 

一般検査

一般検査は主に尿の検査をします。

その他に、便髄液胸水などの体腔液の検査も検査します。

 

 

参考

一般検査のメインの検査は尿検査なので、『尿検査』という名称でもいいのですが、尿以外の検査も取り扱います。

そのため、どれにも属さない検査として独立するようになったので、『一般検査』と呼ばれるようになりました。

 

 

ほとんど機械によって検査されますが、尿が混濁していた場合や尿潜血が酷い場合は機械の負担になってしまいます。

この場合は顕微鏡で目視確認して、尿中の赤血球数や白血球数、扁平上皮などをカウントします。

 



尿検査は内科系で検査することもありますが、泌尿器では必要不可欠です。

尿から排出される赤血球や白血球、上皮細胞などを知ることで腎臓または尿路系の病気診断します。

 

 


髄液検査は脳室と脊髄腔に存在する液体であり、1回で採取できる量は少ないです。

そのため、検査項目が多い際は分量を考えて検査しています。

髄液の色や濁りなどの外観、髄液中の糖や蛋白、クロール(Cl)を検査します。

細胞数はサムソン液という染色液で染色して、単球や多核球の細胞をカウントします。

 

髄液中の細胞成分はすぐに変性しやすいので、すぐに検査をしなければなりません。

時間が経過すると単球や多核球の数が変化します。

 

 

 

体腔液は腹水や胸水などに溜まった液体を大きいシリンジ(注射器)で取り出して検査します。

髄液と同様に色や濁りなどの外観、体腔液中の糖や蛋白を検査します。

リバルタ反応という検査で炎症や悪性疾患によって滲みだした液体か、炎症以外の基礎疾患によって漏れ出した液体かを調べます。

 

 

 

便検査は消化器内科で主に検査されます。

スクリーニング検査として用いられる便潜血反応、ヘリコバクター・ピロリの抗原検査など感染症を検査する微生物検査が主になります。

 

 

 

 

細菌検査

細菌検査は体の中にいる有害な微生物を検査します。

ウイルスも検査しますが、そもそもウイルスは単体で生きていくことができず、宿主となる細胞が必要です。

そのため、インフルエンザウイルスなど限られたウイルスしか検査できません。

 

ナオキ
細菌検査は詳しくないので、内容が薄いかもしれません。 /
ご了承下さいst-kaiwa1]

 

 

細菌には酸素を好む細菌(好気性菌)と、酸素を嫌う細菌(嫌気性菌)がいます。

血液から採取する際は、好気ボトルと嫌気ボトルの2本を採取してもらいます。

その後、培養する専用の機械で培養させます。


他にも、羊寒天培地などに細菌を塗抹して、菌が培地に発育するかを観察します。

培地の発育状況によって、菌を同定することができます。

また、培地以外にもリジン脱炭酸などの生化学的性状で菌を同定することもあります。

 

 

結核菌のように空気感染する細菌もいますので、このような細菌を取り扱う際は完全防備で検査をしていきます。

 

 

 

 

 

輸血検査

輸血する目的は貧血や血小板の低下、大手術で輸血が必ず必要になる場合など多くあります。

 


輸血検査は検体検査とは少し異なり、輸血専任の検査技師がいる病院が多いです。

輸血検査専用の部屋があり、輸血部として独立しているこが多いです。

患者さんによっては不規則抗体を持っていたり、オモテ試験とウラ試験が一致しないこともあります。

このような場合にも対処できるように輸血専任の検査技師が存在します。

[st-kaiwa1]輸血検査はどんな患者さんに対しても輸血できるような知識を持っています

 

患者さんと異なった血液型の製剤を輸血すると、播種性血管凝固(DIC)などを発症してしまう可能性があります。

輸血の準備をする際は患者さんの血液型に合った製剤であるかを徹底的に確認します。

 

 

ポイント

輸血は専門の検査技師が検査、製剤の準備をしている

輸血の準備は間違いがないように徹底している

 

 

患者さんの血液型は毎回検査しますが、血液型の他に不規則抗体がないかも同時に検査します。

患者さんが不規則抗体を持っていた場合は、何の不規則抗体を持っているかを特定してから輸血します。

不規則抗体を特定せずに輸血してしまうと、患者さんに拒絶反応が起こってしまいます。

 

 

さらに、患者さんの血液型と輸血製剤が適合する必要があるので、交差適合試験を実施します。

交差適合試験で一致したら、輸血製剤を患者んに輸血することが可能になります。

検査技師と看護師で輸血製剤に問題ないかを確認して、看護師さんに製剤をわたします。

 

 

輸血製剤は病院内に常にある訳ではなく、日本赤十字社から輸血製剤を発注しています。

過剰に発注しても製剤を無駄にするだけですので、必要に応じて発注をしています。

 

 

 

 

生理機能検査

生理機能検査は検体検査とは異なり、検査技師と患者さんが直接接する機会がある検査です。

 

超音波検査(エコー検査)は検査技師の技術によって上手に映し出せるかが決まってしまいます。

また、患者さん自身も協力して頂かないと検査できない分野でもあります。

 

 

心電図検査

 

心臓を診る循環器内科では必要不可欠の検査です。

手首と足首に付ける四肢電極と胸に取り付ける胸部電極で心電図を記録していきます。

 

心電図は心筋細胞膜の興奮性、伝導性、自動性の電位変化を記録していいます。

この電位変化は本当に微量な電位差なので、筋電図が入るとノイズとなり、上手に記録することができません。

そのため、患者んは体を動かさないでいてもらう必要があります。

ナオキ
口を動かすだけでも筋電図のノイズが入ってしまうので、患者さんの協力が必要不可欠です

 

 

基本的に臥位(仰向け)で検査をしますが、座位の状態で検査することも可能です。

患者さんによっては臥位になるのが困難な人もいるので、座位の体勢で検査をしていきます。

検査をする時間は基本的に10秒位ですが、不整脈がある人や疑われる人には1分や3分と長めに検査することがあります。

 

 

ポイント

心電図検査は臥位で静止した状態で検査する

不整脈などがある場合などは長めに検査することがある

 

 

電極の着け間違いをしてしまうと、変な波形になってしまいます。

右手と左手の電極を逆にすると、Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導が入れ替わります。

また、aVR、aVLも入れ替わります。

心電図を常日頃検査している人なら、電極の着け間違いをしたとしても直ぐに気付くことができます。

しかし、たまーにしか心電図検査をしないと、電極の着け間違いに気付かずに検査してしまうこともあります。

ナオキ
私は心電図を撮る際は電極の着け間違いがないかを確認してから検査するようにしています

 

 

 

朝方に心臓の調子が悪い場合など病院に来院しているとき以外の心臓の状態を把握したい場合はホルター心電図を取り付けます。

ホルター心電図は24時間記録することができるので、長時間の心電図を知りたい際にも検査します。

ナオキ
24時間も心電図を取り付けるので、解析をするのは大変です。
薄い参考書ができるの厚さになります

 

 

 

 

肺機能検査

呼吸器内科などで検査します。

肺の大きさ肺活量などを検査します。

 

 

参考

検査技師の間では肺機能検査のことを『スパイロ』と呼んでいます。

spirometry(スパイロメトリー)という英語から由来しています

 

 

口にマウスピースを咥えて、鼻はノーズクリップで留めた状態で検査をします。

口呼吸だけで検査をします。

 

検査技師が患者さんに吸ったり、吐いたりするタイミングを指示して検査をしていきます。

上手に検査できるかは検査技師の技量によります。

患者さんによっては咳き込んでしまう人もいるので、気を付けながら検査をしています。

 

ナオキ
簡単に思えるかもしれませんが、実際に検査してみると意外に苦しいです。
喫煙者の方や高齢者の方々は苦しい思いをして検査をしているので、なるべく、1回で終わるようにしています

 

 

 

 

超音波検査

超音波検査は『エコー』と呼ばれており、心臓エコー(心エコー)と腹部エコーに分かれています。

CTやMRIとは違い、非侵襲性(体に悪影響がない)の検査です。

 

 

心エコーは心臓だけを検査しますが、腹部エコーはお腹以外にも首にある甲状腺、膀胱、頸動脈、下肢など幅広く検査します。

臓器によって伝搬速度が異なりますので、取り扱う周波数プローブが異なります。

 

心エコーは心電図同様に循環器内科で必要不可欠な検査です。

心電図では検査できない、心臓の大きさ動き血流などを画像もしくは映像として観ることができます。

検査している際はリアルタイムで心臓の動きを観ることができますが、電子カルテ上には画像として記録されていることが多いです。

動画として記録することもできますが、容量が大きくなるので、短時間の動画しか電子カルテ上にしか残りません。

心臓のどの部分に異常があるのかを把握するのに役立っています。

 

 

 

腹部エコーは肝臓などの悪い部位を特定することができます。

生化学検査では肝臓が悪いということがわかりますが、肝臓のどの部位が悪いのか具体的にはわかりません。

エコーでは肝臓の右葉など具体的に病的な部分を把握することができます。

肝臓以外にも、膵臓の尾部、胆嚢、膀胱、頸動脈など幅広く検査することができます。

 

 

ポイント

エコーは検査する臓器によって周波数やプローブが異なる

臓器の問題のある部位を具体的に特定することができる

 

 

 

 

病理検査

病理検査は輸血検査同様に、病理専任の検査技師がいます。

病理検査専用の部屋があり、病理部として独立しているこが多いです。

 

ナオキ
病理のことはあまり詳しくないので、内容が薄いかもしれません。
ご了承ください

 

 

病理は手術から採取した検体などを固定、包埋、薄切、染色などをして顕微鏡で観察できるようにします。

病理は検査技師の中でも本当に技術が必要となる部署です。

ナオキ
私は職人さんの域だと考えています

 

取り扱う試薬もホルマリン、キシレンなど有機溶剤などの劇物を取り扱うので、試薬の管理は徹底しています。

 

 

ポイント

病理検査は検査技師の中でも技術が必要となる

取り扱う試薬は危険であり、管理は徹底している

 

 

 

 

その他の検査

上記に挙げた仕事以外にも臨床検査技師は採血聴力検査眼底検査脳波筋電図検査など幅広く検査しています。

採血は看護師さんだけしかしないイメージがあるかと思われますが、臨床検査技師も採血はします。

検査技師が採血するメインの患者は外来患者さんの採血がほとんどで、入院患者さんは看護師さんが採血します。

採血する血管はほぼ決まっていますが、血管の近くには神経もあるので、神経を傷つけないように採血をします。

 

 

 

脳波は患者さんの脳波を検査したり、手術中の脳波のモニタリングも実施します。

筋電図検査は筋肉の電気活動を増幅検して神経や筋肉の機能を調べる検査です。

筋電図検査は目に見えない神経を刺激するので、刺激する位置や刺激の強度が正確である必要があります。

刺激する位置や強度が不適切な場合、正常な筋肉や神経が異常となってしまいます。

そのため、筋肉や神経の知識だけでなく、技術も必要になる分野です。

 

 

ポイント

採血や脳波、筋電図検査などの検査も検査技師がしている

採血や筋電図検査においても技術が必要となる

 

 

 

 

まとめ

今回は病院で勤務する臨床検査技師の検査内容をについて紹介致しました。

臨床検査技師は幅広く色々な検査をしていることがわかった思います。

 

病院の規模によって、検査できる内容は異なります。

検体検査だけだったり、検体検査と生理機能検査のみなど様々です。

脳波や筋電図検査は手術室や防音室がないと検査ができません。

 

また、危険な試薬も取り扱う部署もありますので、試薬の管理も徹底しています。

 

検体検査は機械に任せて検査をしていますが、エコーや病理など技術も必要となる部署もあります。

ここで検査技師の技術の差が出てくると私は思っています。

職人さんになれるように日々精進していくことが大切だと考えています。

 

  • この記事を書いた人

ナオキ

中規模病院の臨床検査技師から一般企業に転職。 転職期間10ヶ月、応募数は100社以上。 →転職で給料と休日数アップ。 検査技師の転職で自信がない、内定が貰えない人向けに記事作成

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