今回は大学の実験や研究で使用するピペットなどの実験器具の取り扱いについて私が感じた大学と臨床検査技師のギャップについて書いていきます。
そもそも、実験や研究で使用するピペットなどの実験器具は臨床検査技師でも使用するのかという疑問があると思います。
実は、検査技師も普通に毎日使用しています。
10mLや10Lのように大きい単位を取り扱うこともありますが、μLやmLもよく使用します。
そのため、マイクロピペットは毎日のように使用します。
この他にもホールピペットやシャーレなども検査室内で使用します。
しかし、大学と検査室内では取り扱い方が異なると感じました。
この内容に関して書いていきます。
今回の記事内容
- 大学では全ての実験器具に滅菌処理をしている
- 臨床検査技師は滅菌処理するものとしないものがある
- おまけ(滅菌処理方法)
大学では実験器具は全て滅菌してある
大学の実験や研究で使用する実験器具は全て滅菌処理してあります。
実験や研究では培地などにコンタミしてしまうと、実験データに影響を与えてしまうため、滅菌処理は絶対にします。
実験や研究はコンタミがない状態で操作するのが常識であり、コンタミした実験データは操作が誤っていると判断されます。
ポイント
大学では実験器具は全て滅菌処理してある
コンタミした実験で細胞数が増加したとレポートや論文を書いた場合、
無菌状態で再現実験をしてみると、実際には細胞は増加していないことになり、虚偽の報告になってしまいます。
コンタミによる影響を無視できない実験や研究は絶対に発表してはいけません。
そのため、実験器具にはホコリや雑菌によるコンタミがないように滅菌処理をしてから使用します。
検査室内の器具は基本滅菌していない
検査室内で取り扱う器具はマイクロピペット、スポイト、ホールピペット、ピンセットなどの器具を取り扱っています。
しかし、これらは滅菌されてはおらず、とりあえず使えればいいみたいな感じで使用しています。
スポイトやマイクロピペットのチップは使い捨てなので、一度使用したら直ぐに捨てます。
ホールピペットのようなガラス製品は使い捨てができないので、使用後は純水で洗って終わりです。
検査においては使用する器具すべてが滅菌処理している必要はなく、ある程度綺麗であれば問題ないという感覚で使用しています。
ホコリのような目に見えるかどうかの汚れは気にせずに使用しています。
目に見えない汚れは検査上問題ないので、使用していると思われます。
しかし、滅菌処理を必要とする器具もあります。
滅菌処理が必要な器具
- 細菌など微生物を取り扱う器具
- 患者さんに直接使用した場合や病変部位に使用した器具で尚且つ使い捨てができない器具
細菌は空気中、机の上などあらゆるところにいるので、体内の細菌とコンタミしないようにするために滅菌処理した器具を使用します。
コンタミした検体をグラム染色した場合、コンタミした細菌も染色されてしまい、本来存在しない菌を報告してしまうことになります。
これは患者を治療するに当たって問題になります。
そのため、細菌を取り扱う器具は必ず滅菌処理をします。
骨髄穿刺の際に使用するピンセットは使い捨てがあまりできないので、滅菌処理をして何回も使用します。
医療器具の滅菌処理は検査技師がするのではなく、滅菌処理を専門とする業者さんに滅菌処理してもらいます。
私が感じた大学と検査室のギャップ
私は大学と検査室内での器具の取り扱いでギャップ感じました。
大学では全て滅菌すべきと言われてきたので、新卒で検査技師になった際に驚きました。
検査技師は検査器具を雑に扱うのかと思ってしまい、逆に適当過ぎるだろうと感じました。
検体を希釈する際、マイクロピペットのチップを袋から取り出して、そのまま使用するので、『え?』と思いました。
念のため先輩に滅菌していないのに使用しても問題ないのかを訊いてみました。
この時から私は検査室内ではこんなもんなのかと思うようになりました。
逆に、目に見えるかどうかの汚れ程度では検査する上であまり影響しないんだと思うようになりました。
現に、滅菌処理していなくても検査する上ではあまり問題ではありません。
実は内心、滅菌処理した方が良いのではないかと思っています。
しかし、検査室内で使用する全ての検査器具を滅菌処理する場合、オートクレーブや乾熱滅菌器が必要となります。
また、滅菌処理器は場所も取りますし、コストも掛かります。
このようなことを考えると、全ての検査器具に滅菌処理をしなくてもいいのではないかを思いました。
滅菌処理方法
これはおまけのような感じで、滅菌と消毒の違い、代表的な滅菌処理方法について書いていきます。
滅菌と消毒
そもそも、滅菌と消毒は異なります。
ポイント
滅菌:全ての微生物を殺菌または除去すること
消毒:特定の微生物、通常ヒトに対して有害な微生物を殺すこと
滅菌をしても完全に微生物を死滅することができない菌も存在します。
そのため、100%除去は難しいかもしれませんが、ほぼ除去することができるのが滅菌です。
消毒は滅菌とは異なり、殺菌できない菌も存在します。
しかし、消毒によってヒトに有害な菌は死滅・除去することができます。
滅菌処理方法
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)
2気圧、121℃、15分~30分
金属製品、ガラス製品、プラスチック製品などが対象物となります。
乾熱滅菌
150℃~160℃、30分~60分
ガラス器具、金属製品が対象物となりますが、非耐熱性ガラス製品は対象外になります。
熱によりガラスが変性してしまう可能性があります。
火炎滅菌
ガスバーナーなどで直接微生物を焼却する滅菌法です。
白金耳や白金線などに使用します。
しかし、結核菌や一部の真菌では施設感染の危険性があり、火事などの危険性があるため、使用しないこともあります。
酸化エチレンガス(EOG)滅菌
加熱による滅菌ではなく、化学的方法による滅菌法です。
加熱滅菌が困難なプラスチック製品などに有効ですが、人体への有毒性が強く注意が必要となります。
まとめ
大学と臨床検査技師とでは器具を全て滅菌するかどうかが異なります。
大学では全ての実験器具を滅菌処理しますが、検査技師は一部滅菌処理をします。
検査技師は以外に大雑把で、多少のことは気にしない感じですが、大学はキッチリとした几帳面さあります。
しかし、一部の検査器具によっては滅菌処理が必要な器具もあり、そのような器具はちゃんと滅菌処理をしています。
そのため、大学でずっと実験や研究をしていた人が検査技師になったりすると少し驚くかもしれません。