細菌はどこにでも存在し、皮膚や体の中にも存在します。
人と細菌は切っても切り離せない関係です。
数えきれないほどの数の細菌が存在します。
腸内細菌などお腹の調子を整えたり、納豆など発酵食品などで細菌は人の生活にとって重宝することがあります。
人の役に立つ細菌は無くてはならない存在です。
しかし、細菌の種類によっては人にとって有害となる細菌も存在します。
今回の記事内容
- 細菌の基本とグラム染色について
- 細菌の検査
- 人に有益な細菌もいる
- 薬剤耐性菌
- 細菌の芽胞形成
目次
細菌とは
細菌はヒトと同じれっきとした生物であり、ウイルスのように生物がどうか中途半端な存在ではありません。
ウイルスに関する記事はこちら
厳密に言うと、細菌は原核生物であり真核生物であるヒトよりも構造が簡単になっています。
核酸の転写と翻訳の場が同じなので、増殖スピードが速いです。
一定の条件下の環境さえあれば、生きていくことができ、増殖することもできます。
細菌の種類によって育つ環境は異なります。
ヒトの体の中で育つ細菌もいれば、高温でしか生きれない細菌、酸素がない状況でも生きることができる細菌までいます。
細菌は大きく4種類の形態に分類することができる
検査技師が検査をする上で一番最初にする検査がグラム染色です。
グラム染色はグラム陽性菌とグラム陰性菌を分類することができます。
グラム陽性菌は紫(赤紫)色、グラム陰性菌は赤色に染まります。
また、細菌を染色すると形態もわかるようになります。
丸かったり、細長い形をしていることがあります。
丸い形を球菌、細長い形を桿菌と分類しています。
グラム陽性菌、グラム陰性菌と球菌、桿菌の組み合わせで以下の4種類に分類できます。
グラム陽性球菌
グラム陽性桿菌
グラム陰性球菌
グラム陰性桿菌
菌を特定することができなかったとしても、4種類に形態学的分類できれば、患者に投与する抗菌薬も明確になります。
検査する検査技師だけでなく、患者を治療する上でも4種類の形態学的分類は大事になります。
グラム染色の原理
グラム染色はクリスタルバイオレットとフクシンという染色液で細胞壁を染色します。
グラム染色の作業過程
スライドガラスに菌を塗抹します
↓
クリスタルバイオレットで細胞壁を紫(青)色に染色します
↓
ヨウ化カリウムで錯体を形成させる
↓
アルコールで洗浄する
↓
フクシンで赤色に染色
この染色法でグラム陽性菌は紫(赤紫)色、グラム陰性菌は赤色になります。
グラム陽性菌は細胞壁が厚いので、クリスタルバイオレットで染色した後にアルコールで洗浄しても脱色されません。
しかし、グラム陰性菌は細胞壁が薄いので、クリスタルバイオレット後のアルコールで脱色されてしまいます。
最後にフクシンで染色するので、グラム陽性菌は紫(赤紫)色、グラム陰性は赤色に染色されます。
検査する材料は色々ある
ウイルスとは違い細菌はある程度安定して生きています。
細菌が生存しやすいような環境にすれば、検査は可能です。
検査でよく出る材料が血液培養、尿培養、便培養、喀痰培養です。
時折出る検査として、咽頭や鼻腔の粘膜をスワブで拭ったり、傷口からスワブで拭って培養する検査もあります。
髄液は一般検査で細胞数をカウントするだけでなく、培養の検査も出ます。
膵液や腹水、胸水など体腔液も培養の検査がでたりします。
細菌の中には好気性菌と嫌気性菌がいますので、血液培養は必ず好気ボトルと嫌気ボトルの2本で提出されます。
体腔液には嫌気性菌がいるので、嫌気培養で提出されます。
保存方法は基本的に冷蔵保存
体の外に出た細菌は生存しにくいですが、4℃程度の冷蔵保存であれば生きています。
血液培養だけは冷蔵保存ではなく、専用の機械の中で一定の温度で培養させます。
血液中の細菌はヒトの体温と等しくしなければいけないので、専用の機械で培養させます。
細菌の種類によって保存方法が変わりますが大体冷蔵保存が多いです。
例外
髄液は37℃で保存、培養しなければいけません。
髄液中の細菌は冷蔵や凍結させてしまうと死滅してしまい、細菌が検出できないことがあります。
細菌の検査方法は色々ある
グラム染色以外にも細菌を検査する手段は幾つかあります。
専用培地で培養、細菌が出す毒素の検査、生化学的性状検査、血清検査、PCR検査など色々あります。
細菌の種類によって検査に適しているかどうかが異なります。
専用の培地で育つ菌もいれば育たない菌もいます。
医師は当てずっぽうで検査をしている訳ではなく、ある程度予想してから検査をオーダーしています。
細菌はどこにでも存在し、ヒトに有益な細菌もいる
細菌はどこにでも存在します。
体の中、皮膚、床、ドアノブ、鉛筆など様々なところに細菌は存在します。
たとえ、手を綺麗に洗ったとしても若干は細菌が残っています。
あまりにも綺麗過ぎると、有害な細菌などが侵入しやすくなり、皮膚のバリア機能を失ってしまいます。
寧ろ、細菌を無くすことはヒトにとって不利益を与える場合もあります。
常に細菌と一緒にいるので、ヒトにはある程度の細菌に対しての免疫ができています。
擦り傷から細菌(重症な疾患の細菌は除きます)が少し侵入してきたとしても、免疫細胞が細菌を退治してくれます。
細菌は食品においても活躍している
ヒトのお腹の中に腸内細菌が存在し、お腹の調子を良くしたり、免疫細胞を活性化させたりします。
漬物や納豆、ヤクルトなど様々な食品で活躍しています。
細菌の種類によって症状は異なる
病原性細菌の種類によって症状は様々です。
下痢、肺炎、高熱、尿路、神経毒、免疫系、血液など様々あります。
基本的に健康な人であれば、自分の免疫で細菌をやっつけてくれます。
しかし、体の具合が悪かったりすると普段感染しないような細菌にも感染してしまうことがあります。
医師は抗生剤を患者さんに処方します。
抗生剤は必ず飲み切るようにしないと、完全には細菌が死滅していない場合があります。
また、自己判断で薬を飲むのをやめてしまい、薬剤耐性菌が出てきてしまうこともあります。
薬剤耐性菌が発生しないようにする
病院などの医療施設で一番気を付けなくてはいけないのが細菌による院内感染です。
医療施設内での院内感染は大体薬剤耐性菌による感染が多いです。
医師は院内感染が起こらないように抗菌薬を患者さんに投与します。
細菌感染がわかっても、何の細菌に感染しているか最初はわからないことがあります。
この場合、グラム陽性菌、グラム陰性菌に関係なくどの細菌にも効く抗菌薬を投与します。
しかし、広く浅く効く抗菌薬をずっと投与し続けると細菌が薬剤に対して生きられるように耐性を持つようになります。
これにより薬剤耐性菌が出てきてしまいます。
薬剤耐性菌が出てしまうと、さらに強い抗菌薬を投与しなければいけなくなります。
強い抗菌薬は細菌だけでなく、投与している患者さん自身にも負担が掛かってしまいます。
薬剤耐性菌は治療が難しく、致死率が高いため病院内での流行・蔓延が問題になります。
芽胞を持つ細菌は普通の消毒では効果がない
細菌の中には芽胞という強力なバリア機能を持つグラム陽性桿菌がいます。
細菌が育つ環境があまり良くないと芽胞をつくりだし、休眠状態になります。
芽胞を持つグラム陽性桿菌
バシラス
クロストリジウム属(破傷風菌、ガス壊疽菌、ボツリヌス菌など)
芽胞は100℃の加熱、アルコール消毒をしても死滅しません。
高圧蒸気滅菌、乾熱滅菌でやっと滅菌できるくらい最強です。
次亜塩素酸ナトリウムで消毒しても有効かどうか曖昧なことがあります。
そして、細菌が発育しやすい環境になったら芽胞から発芽して、分裂・増殖を再開します。
しかし、大体の細菌はアルコール消毒で死滅または不活化できます。
手洗いやうがいで大体の細菌に対して効果があります。
まとめ
今回は細菌について書きました。
細菌は原核生物であるため、増殖スピードが速いです。
細菌に適した環境であれば、勝手に生育します。
細菌はウイルスとは異なり、ある程度生きていられるので、検査方法は色々あります。
そのため保存も冷蔵保存で大丈夫です。
病原性細菌だけでなく、人の役に立つ細菌もいます。
細菌を1匹も残らずに体から排除することはできず、寧ろ私たちの生活になくてはならない存在です。
病院内で薬剤耐性菌が発生しないように気を付けなければいけません。